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読む。書く。のこす。

『料理人』ハリー・クレッシング(ハヤカワ文庫NV)

ある町の半分を所有するヒル家に雇われた料理人コンラッドが、徐々にヒル家に影響力をもっていく下克上のお話。
一応、料理が重要なファクターになるんだけど、読んでいてそれほど美味しそうな料理が出てこない。この本の購入動機の半分近くを「どんなうまそうな料理がでてくるんだろう」という欲望が占めていたので、その点では期待外れだった。やはり料理や食事の描写で満足感を得るためには池波正太郎村上春樹を読むしかないのか。
映画にしても本にしてもそうなんだけど、美味しそうな料理や美味しそうに食べてる食事の場面が出てきたらそれだけでその作品に対する自分の満足度が上がることに気が付いた。それがごく個人的な楽しさの範囲内だったら問題ないんだけど、人と話しているときに「この人が実に美味しそうに料理を食べるんだよ。」なんてことを話してもあまり共感を得られない。経験上。
そんな訳で『料理人』も美味しそうな食事は出てこないけれども、コンラッドがヒル家に対してじんわりと支配力を高めていく過程は自然な上に滑稽で面白い。コンラッドの最終的な目的がなんだったのかは、結局わからなかったけれども・・・。

料理人 (ハヤカワ文庫 NV 11)

料理人 (ハヤカワ文庫 NV 11)