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履歴を記録すること

ノルウェイの森がエロかったおかげで

僕は顔を上げて北海の上空に浮かんだ暗い雲を眺め、自分がこれまでの人生の過程で失ってきた多くのもののことを考えた。失われた時間、死にあるいは去っていった人々、もう戻ることのない想い。

村上春樹ノルウェイの森』p6。
初めて『ノルウェイの森』を読んだのは高校2年生の時で、文学的なことや村上春樹的な文体なんかどうでもよくて、単にさらりと書いてあるエロさに感動して村上春樹ってスゴイ、などと貸してくれた友人と盛り上がっていただけだった。
そして、初読以降も何度か再読していた『ノルウェイの森』をずいぶんと久しぶりに読み返してみたら、初めて読んだ時のような興奮もなく何度も読むなかで酔っていた村上春樹的文体に酩酊するわけでもなく、ただストンっと腑に落ちるというか心身ともにしっくりとくるというか、ある一線を越えてしまったんだなという寂しい感慨はあるものの、それはそれで悪くない読書体験だった。エロから始まったノルウェイの森だったのに。
まあ、中学・高校で読んでいた文学作品って、有名無名や古典的な価値が選択基準ではなくて内容・描写にエロさがあるかないかが読むための基準だったから、当時読んでいた本を今読み返すとだいたいの作品が「エロからの出会いだったのに・・・」という感じを受けそうな気がする。