so:an

読む。書く。のこす。

初物は縁起が良い

書くだけ書いて、下書き保存した状態で放置してたorz

初物1

怪談文芸を書きたい読みたい人の為の入門書、東雅夫『怪談文芸ハンドブック』で怪談文芸の系譜に舌鼓を打ちながら、ちくま日本文学の『内田百けん』で内田百けんの小説を初めて読んだ。いつも通りの適当な食い合わせだったにも関わらず、示し合わせたように理論と実践でリンクされていた。興味のベクトルが、ある方向に向かっている時には、その矢印に沿って小さい人が落ち穂拾いをするからリンクしているように感じやすいのかもしれない。
それにしても、随筆や旅行記でのユニークで頑固な内田百けんしか知らなかったので、正直なところとても驚いた。ただの偏屈爺じゃなかったのか!って。とはいえ、夢うつつを行ったり来たりするような幻想的な灯火の向こうには、丸眼鏡でへの字口の作者の顔が見え隠れしていたけど。

初物2

東野圭吾『秘密』。これが、初めての東野圭吾作品。文体のせいか貫井徳郎の作品ほどぐったりと重たくはないけれど、軽くはない。これまで手に取らなかった理由としてどんな屁理屈をつけて片付けようかと考えてみたけど、単に巡り合わせの問題という結論。
これほど読み手の立ち位置を意識させてくる作品だとは思ってもいなかった。男か女か、親か子か、加害者か被害者か、生きているか死んでいるか。自分の立場や究極の選択問題についてシビアに考えさせられながらも、エンターテイメントとしての推進力が減少することがないというのはすごい。
それで延ばしに延ばしていた東野圭吾作品との出会いは、物語への吸引力やキャラクタ造形の巧みさなどなどこれはファンが多いはずだ、といった感想を持ちながら涙腺の掃除をしてた。

窓の外は相変わらず風が強かった。空き缶の転がる音が聞こえた。

p360

怪談文芸ハンドブック (幽BOOKS)

怪談文芸ハンドブック (幽BOOKS)


内田百けん (ちくま日本文学 1)

内田百けん (ちくま日本文学 1)


秘密 (文春文庫)

秘密 (文春文庫)