『車輪の下で』ヘルマン・ヘッセ(光文社古典新訳文庫),1906
THE・青春。中学生の頃に読んで以来だと思う。終盤、ハンスが転がり落ちていく様の強烈な感触しか残っていなかったので、ここまで青春直球勝負な内容だったことに驚いた。
そしてあらためて読んで残った感触は、神学校での試験を終え、地元に戻ってきたハンス・ギーベンラートが川へ釣りに行って夏を感じる場面。
水面では暖かい空気が揺らめき、見上げればムック山の上にも手のひらくらいの大きさのまばゆい雲があった。暑くなってきた。青空の中空に静かに白くかかっている小さくて穏やかな雲ほど、夏の盛りの暑さを感じさせるものはない。それらの雲は、じっと見つめることができないほど光に満たされ、明るさに浸されているのだった。
(p55-56)
まさしくここ1,2日がこういう感じの夏!という気候なので、印象に強かった。今後は『車輪の下で』は暑さと一緒に記憶されることになるかもしれない。ヘッセにとっては不本意だろうけど。