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読む。書く。のこす。

『鏡の影』佐藤亜紀(ビレッジセンター出版局)

ビレッジセンター出版局版。
ヨハネスとシュピーゲルグランツの道中は、弥次喜多コンビのようで面白いと思っていたのに、なるほどファウストメフィストフェレスの関係がモチーフだったのか。読了後に解説に目を通すまで分からなかった。中世ヨーロッパが舞台で十返舎一九の『東海道中膝栗毛』というのも趣がある、などと思ってたのに。
と、本歌取りの元ネタはわからなかったものの、そのような読者でも作品の雰囲気や登場人物の皮肉なもの言いが好きであるならば読書体験として楽しめるところが逸品なんだと思う。そして、作品の雰囲気ということで考えてみると僕にとって『バルタザールの遍歴』がいまいちで、『鏡の影』の評価が高かったのは単純に時代背景の問題というのもあったのではないのかと。大戦間期のヨーロッパよりも中世ヨーロッパの方が好みだから。

鏡の影

鏡の影