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『科学の扉をノックする』小川洋子(集英社)

あとがきより

子供の頃から、新聞で一番好きなのは科学の記事でした。
(中略)
そして記事の脇に研究者のお写真が載っていれば、当然私の目はそこに釘付けとなります。この先生の脳みそには人間はどんな姿で映っているのだろうか、一体どういういきさつでこの研究をするようになったのだろう、きっと研究室には私など想像もできない魅力的な道具にが隠されているに違いない・・・。私の妄想はどんどん膨らんでゆきます。

(p204)
という小川洋子の妄想を本にしたのが本書である。なので最先端の科学の成果を求めるような内容ではないので、詳しくはないけれど少しだけ科学に関心がある人にとっては好奇心を満たすのにちょうどよいサイズなんだと思う。情熱大陸やNHKのプロフェッショナルで、科学者がとりあげられるとわくわくする人などが範囲に入ってきそう。
本書で対談相手に取り上げられている人は、国立天文台の渡辺潤一・鉱物学の堀秀道分子生物学村上和雄スプリング8の古宮聰・粘菌研究の竹内郁夫・遺体科学の遠藤秀紀阪神タイガースのトレーニングコーチ続木敏之。と、幅広い分野にまたがっていて、小川洋子のアンテナ感度の高さに驚く。どうやって選んだんだのか気になる。
おまけ。スプリングエイトの章で、和歌山カレー事件とセットで語られていた部分に既視感を覚えながらも読み進めていたら思い出した。東野圭吾の『聖女の救済』に出てきたペアだったからだ。フィクションとノンフィクションが繋がる体験というのは、気持ちが高ぶる。

科学の扉をノックする

科学の扉をノックする