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読む。書く。のこす。

『象と耳鳴り』恩田陸(祥伝社文庫)

六番目の小夜子』で登場した関根秋の父・関根多佳雄や兄、姉が安楽椅子探偵よろしく謎を解いていく短編集。
単に推論を重ねていくだけのミステリを苦手としている僕が、この本を楽しむことができたのは恩田陸の描く人物の魅力が大きな要因だったと思う。

私は、本格ミステリというのは、「説得」と「納得」の小説だと思っている。こじつけだ、詭弁だ、よくみると論理的でないと言われようとも、小説を読んだ時に読者がその中で「納得」し、「説得」されれば、その本格ミステリは成功しているのだ。そして、その「納得」に「驚嘆」が加わるようであれば、それは本格ミステリとして傑作だと言えるだろう。(P310)

文庫版あとがきより。なるほど、と腑に落ちる表現。さらに、西澤保彦による解説「パズラーと恩田陸、または形式とイマジネーションの幸福な結婚について」も珍しく読み応えのある解説だった。

象と耳鳴り―推理小説 (祥伝社文庫)

象と耳鳴り―推理小説 (祥伝社文庫)