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『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹(東京創元社)

鳥取の赤朽葉家を舞台に女三代、戦後からゼロ年代にまたがる年代記。三代とは祖母の万葉、母の毛毬、子であり記述者の瞳子。これまで読んだ桜庭一樹の本の中では最も面白かった*1
辺境の人にまつわるエピソードからツボにはまったので、物語の面白さは万葉>毛毬>瞳子となってしまった。同時代の人間の物語にはシンプルな明るい未来といった展望もなく鬱々となってしまけれど、万葉が中心である神話時代の話には神話らしく神様のありえないエピソードに彩られていることが物語として楽しめた要因か。
ところで、終盤の空飛ぶ男の謎よりも、家族を軸に時代や世代によって変わっていくライフスタイル、価値観の変遷についての記述に興味が向くのは、最近ミステリから関心が離れていっている自分を改めて省みているようで面白い現象だ。

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説

*1:いや『GOSICK』シリーズも捨てがたいけど。